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『空の中』有川浩
評価:
有川 浩
(2004-10-30)
Amazonおすすめ度:

空の中。
「秘密」は遥か前からそこに存在していた。
ある空域で相次いで起こった原因不明の航空事故。
秘密を知った大人たち。
秘密を拾った子供たち。

高度二万メートルの空の中、そこには――。



ああ、切ないなこれは。
泣きたいと思わないのに、泣きそうになる。

人間と未確認生物(白鯨)との出会い。
個であることが全て、とただ生きることを望む白鯨。
人間など及びもしない高い知能を備えていながら、その純真な精神ゆえに他者との関わりを避けてきた白鯨。
しかし、航空事故での接触をきっかけに「ただ生きる」ことが出来なくなる。

航空事故で親を失った少年少女。
少年は心の充足を求め、少女は存在意義を求める。
それが白鯨に絡んで誤った方向へ向かってしまうのが痛々しくて。
彼らを責めることはできない、でも何とかしたい、と頑張る人達がまた切なくて。
極めつけはそんな人間たちのエゴに振り回されても純真な白鯨が愛しくて。
泣かせ三段攻めにあえなくやられました。

なんか有川浩の書く人物って棘があっても内に向いてることが多くて、
そんなに自分を傷つけなくても……と感情移入させられちゃうんだよね。
まっすぐというか何と言うか、心に沁みる台詞が多い。

いや、決して切ないだけの物語ではないんだろうけど、他は全部切なさの演出みたいになってるんだよね。
登場人物には、『図書館戦争』の堂上&小牧のような人物もいて微笑ましいシーンも少なくないし、舞台となる四国の土佐弁は親しみやすい。海と共に生きる生活がゆったりと描かれていてホッとしたりもする。
ただただ平穏に生きる人々がいて、そして空にも同じように平穏に生きる白鯨がいただけ、なんだけど。
互いの存在を知ってしまったために、そこに色んな痛みが伴って、かれらの生活が変わっていく。

やっぱり熱いドラマを語るのが巧い人だなあ。

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読んでいただきありがとうございました
作家別・ア行(有川浩) | comments(16) | trackbacks(2)
『ビター・ブラッド』雫井脩介
評価:
雫井 脩介
(2007-08)
Amazonおすすめ度:
個人的には名前だけで読む気になる作家、雫井脩介。
彼の『ビター・ブラッド』という作品を読んでみた。

「あれ、これホントに雫井脩介?」
表紙を再確認・・・。
これまでの雫井作品にはなかった軽妙な筆致が印象に強く残った。
何か・・・新路線?
いや、こういったエンタメ色の強い作品が嫌いなわけじゃない。
実際、ライトノベルも好んで読んでたりするから、むしろ好き。
ただ、警察官や犯罪者の悲哀をひたすらシリアスに描いてきた『犯人に告ぐ』『火の粉』『虚貌』とは趣きが全然違うので、あの世界観を求めていたぶん、なんだかちょっと肩透かしをくらった感じなのだ。
雫井本は「黙々と読むもの」として、読み方カテゴライズしてたぐらいだから。笑

雰囲気は『クローズド・ノート』に近いかもしれない。
あのしっとりとした感じは全く無いが、根底にあるものは似てる気がした。

少々複雑な家庭に育った新米刑事・佐原夏輝が主人公。
幼い頃に両親は離婚。夏輝と妹は母親に引き取られるも母親は失踪して行方知れずに。
家庭を省みなかった父親に強い嫌悪感を抱きながら夏輝は育った。

分署の刑事となった夏輝はある日、有名な情報屋の転落死事件に遭遇する。
警察とも関わりの深い情報屋でもあったため、本庁捜査一課を中心とした帳場が立てられることになり、夏輝も応援として本庁へ出向くことになった。
しかし出向いた夏輝とコンビを組むために待ち受けていたのは、捜査一課のベテラン刑事であり父親でもある明村であった――。



刑事の花形は、捜一らしい。
新米刑事・夏輝の前に(颯爽と?)現われた捜一五係。
○○レンジャーばりに一人一人解説(説明しよう、と割り込んでくるあの解説)が付き、
アイスマン・バチェラー・ジェントル・チェイサー・ゴブリン・スカンク・アラエモン……そしてジュニアと、○○にほえろ!ばりに愛称が付いている刑事の面々。

何かねえ、もったいない気が。
これだけキャラ前振りしておいてほとんどほったらかしにするってのは。
もう少し彼らの人物が立つ場所が見たかったなあ。
ジェントルの一人舞台、でもないか。チェイサーちょっといいところあったし。
刑事じゃない相星がおいしいところ持っていった感もある。笑


ミステリとして読むには少々物足りないかも。
だってさ、大して自信も根拠もなく何となく怪しく見えた人物がそのまんま犯人だったのよ。笑
月九の連ドラを見てるように映像が浮かんでくる分かりやすい展開、人物をコミカルに描くことで事件の陰鬱さを感じさせない作り、なかでも夏輝と明村、夏輝と相星の漫才のような掛け合いがとにかく笑えた。

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読書、リンク、ですっ(ジェントル仕込み)
作家別・サ行(雫井脩介) | comments(0) | trackbacks(0)
『リピート』乾くるみ
評価:
乾 くるみ
(2004-10-23)
Amazonおすすめ度:

すべては一本の電話から始まった。
「現在の記憶はそのままに、過去の自分へ戻ることができる<リピート>。
そのゲストとしてあなたをお招きしたいのですが――」

こうして集まった男女十人がリピートに臨み、十ヶ月前へと旅立った。
しかしリピートの成功後、リピーター達が一人、また一人と、事件に巻き込まれ不可解な死を遂げていく。
リピート前の世界で起こらなかった事件が起きていることに困惑するリピーター達。
事件の真相を突き止めようと犯人探しを始めるが――。




なかなか悪趣味なタイムトラベルミステリだった。
主人公の毛利圭介は、スナックでアルバイトをしながら大学に通う四年生。
付き合っていた恋人との言い争いの末、思いっきり振られてしまい、それを根にもっている。
小心者なんだけど、自意識過剰で自己顕示欲の強い男である。
まあ、何というか、僕は全く好感の持てない主人公だった。苦笑

そんな毛利圭介を含めた十人が、十ヶ月前の自分へリピート(タイムトラベル)するわけである。
そこで何をやるかと思えば、
結果の分かっている競馬で大金を稼ごうとする者がいたり、
解答を知っている大学入試を受けて合格しようと企む者がいたり。
さすがに主人公はもっとマシなことするだろうと思っていたら、
恋人を振られる前に振ってやる、という何ともあほらしいことをやりだす始末。
お前らな、ネコ型ロボットが登場する某マンガを見習えよと。笑
便利グッズ使い放題のメガネ坊やでさえ、タイムトラベル中は慎重だったぞと。

実際にリピートするまでが長くて、何度か休憩しつつ読んだ。
リピートに対して半信半疑な毛利達が、時間遡行とは具体的にどういうものか、
またその際の注意点は〜という話が、ああでもないこうでもないと行ったり来たり繰り返される。
遊園地でジェットコースターに乗ろうとしたら係のお姉さんの説明が異様に長かった、みたいなあの感じ。

リピート後はジェットコースターよろしく、息つく暇も無い急展開、先が見えず高まる期待感。
一気に読みきってしまった。

乾くるみの想像力はとてつもないなあ。
いや、時間を遡るタイムトラベルものなんてのはよくある話なんだけど、
そこで起こる事件の真相がとてつもなかった。
あの長いリピート説明のくだりで飽きずに読み続けてよかった。
『イニシエーション・ラブ』同様、巧みなミスリードぶりに唸らされたよ。

今更ながらインターネットで筆者の紹介を見て気付いたけど、これってタロットカードをモチーフにしたシリーズ作品の一つらしい。
僕はハードカバー版の『リピート』読んだんだけど、装丁が裏表紙の裏まで続いていて、
それで裏表紙の裏の部分にタロットカードの絵があって、「あれ、この前読んだ『イニシエーション・ラブ』でも確か…」と思って確かめてみたら。

『イニシエーション・ラブ』が「The Lovers:恋人」
『リピート』が「THE WHEEL OF FORTUNE:運命の輪」

おお、それぞれの作品を象徴するかのようなカード。面白い……。

しかし毛利圭介を主人公に据えて、一人称語りにしたのは何故だろう。
どうにも好きになれなかった人物でもあるので、読後は複雑な気分。
ただ、タロットの示す意味に沿った物語であるならば、あの結末は不可欠なものになるので、
その結果、毛利圭介という主人公が出来たんだろうな。なんて半ば無理やりに自分を納得させてみたり。

他に『The Tower:塔』をモチーフにしたシリーズ作品があるみたいなので近々読んでみよう。

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今リピートしたら、このブログ存在してないな。苦笑
作家別・ア行(乾くるみ) | comments(0) | trackbacks(0)
『イニシエーション・ラブ』乾くるみ

成績は優秀、だけど恋愛は初心者のメガネ大学生・鈴木夕樹(たっくん)。
大手企業の内定ももらって後は卒業を待つばかりというある日、
代打出場で出かけた合コンで成岡繭子(マユ)と出会うところから物語は始まる。


A面六章、B面六章という目次構成の恋愛ミステリ。

ああ、見事にだまされた。
この悔しさ。どうしてくれよう。
完っ璧にしてやられた……。
つくづく読み方が甘かったこと思い知らされたわー。

いや、まさか大どんでん返しがあるなんて夢にも思わなくってさ。
よくある普通の恋愛小説だと思って手に取ったんだよ。
ちゃんと書いててくれればなあ。
「トリックにご注意下さい」とか書いててくれればさあ。笑
……でもまあ。知ってたら面白さ半減してただろうから、知らずに読んで良かったかもしれない。


合コンに出かけた夕樹(たっくん)は、そこで成岡繭子(マユ)と知り合い一目惚れする。
へえ、ユウキって僕とおんなじ名前だ……親近感感じる。
あ、しかもメガネもかけてるのか、いやあ奇遇だね、僕もだよ、とさらに高まる親近感。

この瞬間だ。
今思えば、この瞬間に僕は早くもストーリーに落ちていた。
ちくしょう、なんで同じ名前でメガネなんかかけてんだよ。思いっきり感情移入しちゃったじゃないか。
頑張れユウキ、応援してるぞっ。とか何とか思っちゃったじゃないか。
完全に応援スタイル。その先にどんでん返しがあるなんて想定外だったよ。

まあ、でもね。
結局、応援なんて必要なかったんだけど。苦笑
すんなりマユと付き合っちゃうし。
マユのお願いで少しずつたっくんも恋愛初心者を脱して男らしい魅力を身につけていくし。
なんだよ。上手くいってるじゃないか。ていうか、これってただの合コン成功談じゃないか。
なんて言いながらA面を読み終えたわけですよ。

で、B面。
とうとう困難が訪れた。
マユとの付き合いを考えて地元に就職したたっくんだが、突然の派遣話で東京に行くことに。
たっくんに急接近してくる東京の同僚・美弥子。
すれ違い始めたマユとたっくん。そしてマユを美弥子と呼び間違えるたっくん……。
遠距離恋愛中の浮気かー、まあ、よくある話だなあ。
たっくん、あんたも随分変わったねえ、などと心の中で文句言ってた。
(もちろんたっくんの応援などする気はなくなってる)

つまり、たっくんにとってマユとの恋愛は男として生まれ変わるための恋だったと。
こいつ、なんてヤツだ。今そこにいるお前はマユのおかげで恋愛初心者を卒業できたこと忘れんなよ。
と散々たっくんをこきおろしていたわけだが。
迎えた結末で……。

あれ?

結末が、なんかおかしい。

なにこれ。どういうこと。

あ……もしかして、やられた?

だよねえ、やられちゃってるよね。ああぁぁー……ドサッ(ベッドにぶっ倒れた)。

そこから確かめ確かめ読み直し。
ん、何か変だなって気になるところは結構あったんだよなあ。
再読前と後では、印象がガラリと変わる。
初めに読んだときなんで気づかなかったんだろ……。
どうとでも解釈できたのに、決め付けちゃってたんだね。
ラストの二行読んだとき、すぐには意味が分からないぐらい決め読みしてたもんなあ……。不覚。

ラストの二行、これは親切な種明かしなんかじゃない。
読んだ瞬間に、なるほどそういうことか、と即座に理解できる類ではないと思う。
むしろ、「というわけですが、分かりますか」という、読者に対する挑戦状的なものだ。
だからこそ悔しいんだよなあ。
だって、ラスト二行で挑戦状受け取ったときの僕の反応ってば「なにこれ」だもの。笑

乾くるみめ。詐欺師かあんた。次は覚えてろよー。
(意訳:乾くるみさん、してやられました。他の作品も読んでみます)


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「イニシエーション・ブログ」にブログ名を変えてみるか。…やめとこう。
作家別・ア行(乾くるみ) | comments(0) | trackbacks(0)
『顔 FACE』横山秀夫
評価:
横山 秀夫
(2002-10)
Amazonおすすめ度:

幼い頃に出会った婦警の姿に憧れ、夢を叶えるため警官になった平野瑞穂。
鑑識課に配属され、犯人の似顔絵を作成する似顔絵婦警となった瑞穂は、
「自分の描いた似顔絵が犯人逮捕へつながる」ことにやりがいと誇りを持つようになる。
しかし、そこで忘れられない事件が起こった。
瑞穂の描いた似顔絵をもとに犯人が見事逮捕されたのだが、
逮捕された犯人が似顔絵とまったく似ていなかったのだ。
「似顔絵逮捕第一号」としてセッティングされた記者会見での体裁を取り繕うために
上司から似顔絵の描き直しを要求された瑞穂は、嫌々ながらも似顔絵の改ざんを行うことに。
激しい自己嫌悪とやりきれなさを抱えたまま、瑞穂は秘書課の広報公聴係へ配転されて――。




表題通り「顔」をテーマとしていて、ある似顔絵婦警の成長模様を描いた警察小説。
一話完結型の話として一事件ごとに区切られた連作短編集。

どこかで似た小説読んだ気がするなーと思ったら。
ああ、雫井脩介の『虚貌』だった。
頭は切れるが顔覚えの悪い老刑事が犯人を追う話で顔がテーマになってた。
同じテーマでも、見る角度、書いた作家によって伝わってくる印象は全然違うもんだねえ、としみじみ再確認する本の素敵さ。
顔を見る側、見られる側と書き分けたのが『虚貌』ならば、『顔―FACE―』はそこから一歩引いた小説に思える。
見たことない犯人の顔を描いて、見る。


目撃者の証言をもとに犯人の似顔絵を描く仕事。
数秒見ただけの他人の顔なんてどれほど覚えてるのだろうか。

「今日、コンビニのレジにいた店員の顔覚えてますか?」
「んー……、若い女だった、と思います。顔は……うーん……。あ、服装なら覚えてますよ。
セブンイレブンの制服でした。ですね、当たり前ですよね。」


と僕だったらこんな感じだろう。悲しいが自信がある。

凶悪事件の目撃者ならば、強烈なインパクトも手伝って犯人の顔を覚えてる場合もあるかもしれない。
しかし、無意識に見た犯人の顔を思い出せと言われて思い出せる人は少ないはず。
そこから犯人の似顔絵を作成するとなると、もうこれは大変な作業になる。
余計な先入観や憶測を与えないように目撃証言を対象から引き出し、似顔絵を作る。
完成してもその似顔絵が似ているかどうかなんて分からない、場合によっては証言者さえも。
本当に仕事が報われるのは犯人が捕まったときだけなのである。

「定型的な仕事」と考えてた僕の浅はかな理解はあっさり崩された。
いやー、いかに物事を表面だけで見てるかよく分かった。苦笑
ときには死体の顔を見て似顔絵を描くことだってある。
生半可な精神力で務まる仕事ではないなあ。
そんなわけで、瑞穂の仕事に懸ける情熱ぶりには「凄いなあ」と素直に尊敬し好感もった。
物語終盤、感じていたことがラストの一文にさらっと書かれていて思わずニヤけてしまったしね。

実社会における男女格差の実情や、新聞社と警察の関係といったものも巧みに取り入れられていた。
他著『動機』でも感じたが、筆者はこの二点に特に強い思いがあるのかな。


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え、昨日読んだ本の表紙?…それは覚ええますよ。笑
作家別・ヤ行(横山秀夫) | comments(0) | trackbacks(0)
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