スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- | - | -
『ビター・ブラッド』雫井脩介
評価:
雫井 脩介
(2007-08)
Amazonおすすめ度:
個人的には名前だけで読む気になる作家、雫井脩介。
彼の『ビター・ブラッド』という作品を読んでみた。

「あれ、これホントに雫井脩介?」
表紙を再確認・・・。
これまでの雫井作品にはなかった軽妙な筆致が印象に強く残った。
何か・・・新路線?
いや、こういったエンタメ色の強い作品が嫌いなわけじゃない。
実際、ライトノベルも好んで読んでたりするから、むしろ好き。
ただ、警察官や犯罪者の悲哀をひたすらシリアスに描いてきた『犯人に告ぐ』『火の粉』『虚貌』とは趣きが全然違うので、あの世界観を求めていたぶん、なんだかちょっと肩透かしをくらった感じなのだ。
雫井本は「黙々と読むもの」として、読み方カテゴライズしてたぐらいだから。笑

雰囲気は『クローズド・ノート』に近いかもしれない。
あのしっとりとした感じは全く無いが、根底にあるものは似てる気がした。

少々複雑な家庭に育った新米刑事・佐原夏輝が主人公。
幼い頃に両親は離婚。夏輝と妹は母親に引き取られるも母親は失踪して行方知れずに。
家庭を省みなかった父親に強い嫌悪感を抱きながら夏輝は育った。

分署の刑事となった夏輝はある日、有名な情報屋の転落死事件に遭遇する。
警察とも関わりの深い情報屋でもあったため、本庁捜査一課を中心とした帳場が立てられることになり、夏輝も応援として本庁へ出向くことになった。
しかし出向いた夏輝とコンビを組むために待ち受けていたのは、捜査一課のベテラン刑事であり父親でもある明村であった――。



刑事の花形は、捜一らしい。
新米刑事・夏輝の前に(颯爽と?)現われた捜一五係。
○○レンジャーばりに一人一人解説(説明しよう、と割り込んでくるあの解説)が付き、
アイスマン・バチェラー・ジェントル・チェイサー・ゴブリン・スカンク・アラエモン……そしてジュニアと、○○にほえろ!ばりに愛称が付いている刑事の面々。

何かねえ、もったいない気が。
これだけキャラ前振りしておいてほとんどほったらかしにするってのは。
もう少し彼らの人物が立つ場所が見たかったなあ。
ジェントルの一人舞台、でもないか。チェイサーちょっといいところあったし。
刑事じゃない相星がおいしいところ持っていった感もある。笑


ミステリとして読むには少々物足りないかも。
だってさ、大して自信も根拠もなく何となく怪しく見えた人物がそのまんま犯人だったのよ。笑
月九の連ドラを見てるように映像が浮かんでくる分かりやすい展開、人物をコミカルに描くことで事件の陰鬱さを感じさせない作り、なかでも夏輝と明村、夏輝と相星の漫才のような掛け合いがとにかく笑えた。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
読書、リンク、ですっ(ジェントル仕込み)
作家別・サ行(雫井脩介) | comments(0) | trackbacks(0)
『クローズド・ノート』雫井脩介
評価:
雫井 脩介
(2006-01-31)
Amazonおすすめ度:
忘れられたノートを開くとき――忘れられない想いに気づく

引っ越した部屋のクローゼットから、前の居住者が置き忘れたキャンパスノートを見つけた大学生の香恵。
親友が留学してしまった寂しさから、ある晩、香恵は忘れられたキャンパスノートを開いてしまう。
「伊吹's note」と題されたそのノートには、真野伊吹という女性教師の日記が綴られていた。
伊吹の姿に影響を受けて少しずつ変わっていく香恵。
伊吹の物語に勇気づけらながら香恵の物語も歩き始めていった。
重なり合う物語、しかしノートを読み終えたとき――。



『犯人に告ぐ』『火の粉』と読んだ本が当たり続きの作家・雫井脩介。
今回は映画化されたことでも話題を呼んだ『クローズド・ノート』を読んだ。
犯罪小説を書く雫井脩介のイメージが強烈だっただけに、恋愛小説を書く同氏の姿はなかなか想像できない。
さあ読むぞ、というより試しに読んでみるか、と思って手に取った。

大筋は予想通りの展開なのに不覚にも泣いた。
これまでの作品でも感じていたが、雫井修介は文章の押し引きが抜群に巧い。
押し付けることもないし、引きすぎて味気ないこともない。
読み手の感情を丁寧にリードしてくれる。とても読みやすい。

万年筆のくだりなんかは絶妙だ。
専門的な用語を使いつつも、自然な描写を織り交ぜることで万年筆の良さをたっぷり味わせてくれる。
イマジネーションを刺激してくるのだ。万年筆持つのも悪くないな、ちょっと欲しいなあ、いやかなり欲しいぞと思えてくる。笑
作中の言葉を借りるなら、筆者こそ万年筆に魂をこめてるよ。
気づけば主人公が万年筆に抱く愛情を共有してしまってるもの。巧いわー。

ストーリーは、ほとんど予想の範疇から出ることなく進んだが、辟易することなくさくさく読めた。
これぞ「正統派」じゃないだろうか、って言うほど恋愛小説読んでないんだけど、人物配置は王道だと思う。
運命的に出会った男、いけすかない恋敵、空気読めない男、報われない友情。
――ああもう、頑張れ香恵!と応援してしまった。笑

後半に差し掛かるあたりで小説を読んでいるというより、香恵という大学生の日記を読んでるような気分になってきた。微笑ましい日常を眺めてる、そんな気分。
落ち着くべきところに落ち着いたという話だが、想像の余地が残されているところが良い。
それこそ「香恵's note」はこれから記されていくんだろうなあ、と一人ごち。笑
たまには、こういうまったりした本を読んでホロリと涙を流すのも悪くないなあ。


印象に残ったフレーズ

「私は自分で考えているよりもずっと、自分の気持ちを押し隠して生きているのかもしれない」


誰でもそうじゃない?と思ったが、言葉にされると響くものがあった。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
うちのクローゼットには誰も忘れ物していませんでした
作家別・サ行(雫井脩介) | comments(1) | trackbacks(1)
『火の粉』雫井脩介
評価:
雫井 脩介
(2003-01)
Amazonおすすめ度:
視えない恐怖が忍び寄る――マインドホラー的サスペンス

裁判官・梶間勲は、ある裁判の判決公判の日を迎えていた。
被告は武内真伍。殺害された的場親子の隣人であり、事件当時、現場に居合わせて重傷を負い、被害者とされていた一人だった。証拠不十分、疑わしきは罰せず。
合議を重ね熟慮した結果、勲は無罪判決を粛然と読み上げた。
――二年後。
元裁判官の大学教授として穏やかな毎日を送っていた勲の隣家に武内が引っ越してきた。意図的ともとれる偶然に若干の胸騒ぎを覚える勲だったが、かつて無罪を言い渡した立場から無用な心配として彼を隣人として迎え入れた。
しかし、武内の懇切な親切ぶりとは裏腹に梶間家では次々と不可解な事件が起き、徐々に梶間家の家庭は崩壊してゆく。



まず、怖い。
次に、怖い。
最後に、やっぱり怖い。
沸々と湧き上がってきた自らの恐怖心に手に汗握るサスペンス小説。

とにかく武内が不気味。
過剰ともとれる親切ぶりが露骨に怪しく、しかし決して本心を見せない穏やかな笑顔が不気味で仕方ない。
また梶間家が良識人として彼を受け入れるところも彼の不気味さを一層際立たせている。姑の介護に日々を追われる尋恵、母を思いやるあまり尋恵をいびる義姉・満喜子、子育てに疲労感を覚える息子嫁・雪見。
外見は穏やかな一般家庭に見えて、どこの家庭も問題の一つ二つを抱えている、実は際どいバランスを保った上に存在している、そんな家庭の一つ二つの問題を細かく内から描くことでリアルに表現していく。
その上で、そこへ現われた武内の親切ぶりはどう見ても部外者の過干渉としか見れない。とっても不気味で怖いのだ。
巧みに梶間家へ取り入っていく武内とそれを無警戒に受け入れゆっくりと崩壊していく梶間家の様子は、まるで水の張ったコップにそっと異物が入れられ溢れ出していくように見える。

実際に武内みたいな人いるから怖いのかもしれないね。
ここまで大げさな人じゃなかったけど、人との距離のとり方が極端に近い人。
パーソナルスペース?に躊躇いなく踏み込んでくる人。
本人は親切心からの行動だし、こっちもそれが分かるだけに嫌な態度がとれないの。

どう見ても武内は怪しいのだが登場人物同様、僕も彼が犯人だと決定づけることができず、終始、苛々ハラハラしながら読まされた。
彼を犯人と決定付けるためには過去の一家殺人事件の武内犯人説を証明できなければ筋が通らない、極めて疑わしいのだが犯人とすると腑に落ちない点が幾つかあるのも事実。無罪判決も出ている、疑わしきは罰せず――……ああもう武内は犯人なの?どうなんだ?と怪しみつつもギリギリのところで犯人と決めきれず読むしかない。読まされてた。
それで物語半ばでふと思うのよ。
あれ、もしかして…まんまと僕はだまされてた?ミスリードに乗っかっちゃいました?と。小さな謎を一つ解いて読み手の心を揺らしてくるのよ。これがまたいいタイミングで。

評価は、限りなく5に近い星4つ。
読者の心理を巧みにリードする筆力はいかんなく発揮されていた。
かなり、かなり迷ったけど結末に入るまでの展開でどうしても都合が良すぎる部分があって残念ながら星4つにしました。個人的に最も重要視していた部分だったので。
とはいえ、自信を持って人に薦められる作品。ただ、読み始めると気になって仕方がなくなるので時間があるときに読んだ方がいい(笑)


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
投票してランキングサイトを開きます。
作家別・サ行(雫井脩介) | comments(0) | trackbacks(0)
『犯人に告ぐ』雫井脩介
評価:
雫井 脩介
(2004-07)
Amazonおすすめ度:
劇場型犯罪 vs 劇場型捜査

神奈川県警警視・巻島文彦は、管理官として幼児誘拐事件の捜査に加わっていた。
容易に解決するかに見えたが捜査は失敗し、事件は最悪の結果となる。
さらに、記者会見で対応を誤った巻島は、内外の心無い批判を浴びながら閑職へと追いやられる。
――六年後。
難航する連続幼児誘拐殺人事件の捜査責任者として、巻島は再び第一線に呼び戻される。
彼に与えられた任務とは、日本初のマスコミを使った特別公開捜査の指揮だった。



これは何というか、ハリウッドで作った邦画のようだ。派手で地味。
矛盾してますが、とりあえず褒めてます。
題名や主人公の職業から、警察小説と安易に括りたくなるが、
犯罪の残虐性や犯人の描写は驚くほど少ない。

主人公の人物設定上、犯人を追う警察という構図で物語が始まる。
この一章は、六年前の巻島が描かれている。
物語の導入部にしては面白いと思わなかった。何だか地味な展開なのだ。
実際、一章を読み終えた時点では「この本、失敗かも」と思ったぐらいだ。
ただ、この章が欠かせない部分だったことは後に分かったが。

二章以降、話は現在に戻り、劇場型捜査を中心に話が進む。
ここから序々に話に引き込まれた。物語も本題に入り、いよいよ犯人対巻島かと思った。が、どうやらそれだけではない。テレビで犯人と対決すると言っても、ヒーローのように都合良く話が進まないという訳だ。

警察内部の確執と裏切り、マスコミの裏表、被害者遺族の苦しみ、そして守るべき家族。「劇場型捜査」を舞台にしながら、そこで描かれるのは捕物帳ではなく人間ドラマ。派手さが無い。しかし、だからこそ現時味があり面白い。
ミステリ部分はほぼ切り捨てて、ドラマ部分に重心を置いている。
結末に賛否あると思うが、僕はキレイにまとまった良い結末だと思った。
結末前の巻島のアノ台詞でも満足したし。シビレタ。

突っ込みどころを言うなら、犯人や巻島を含めた人物描写。
台詞だけでなく、もう少し地の文でフォローして欲しかった。
とはいえ大方の評価の通り、とても面白かった。著者の筆力が光る渾身の一作…と、本作しか読んだことないのに調子いいこと言ってみる。
それほど、話の運びが巧い。
淡々とした筆致ながら、飽きることなくすらすらと読めた。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
読んでいただきありがとうございました
作家別・サ行(雫井脩介) | comments(0) | trackbacks(0)
Categories
Recent Comments
Archives
ランキング
にほんブログ村 本ブログへ

人気ブログランキングへ

Search this site :
RECOMMEND
RADWIMPS2~発展途上~
RADWIMPS2~発展途上~ (JUGEMレビュー »)
RADWIMPS,野田洋次郎,服部隆之
ラッドにはまってます。
発展途上には収録されていないものもあるけど、「愛し」「祈跡」「夢見月に何想ふ」「ふたりごと」「もしも」は、もう長いこと僕の部屋でヘビーローテーション。笑