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『顔 FACE』横山秀夫
評価:
横山 秀夫
(2002-10)
Amazonおすすめ度:

幼い頃に出会った婦警の姿に憧れ、夢を叶えるため警官になった平野瑞穂。
鑑識課に配属され、犯人の似顔絵を作成する似顔絵婦警となった瑞穂は、
「自分の描いた似顔絵が犯人逮捕へつながる」ことにやりがいと誇りを持つようになる。
しかし、そこで忘れられない事件が起こった。
瑞穂の描いた似顔絵をもとに犯人が見事逮捕されたのだが、
逮捕された犯人が似顔絵とまったく似ていなかったのだ。
「似顔絵逮捕第一号」としてセッティングされた記者会見での体裁を取り繕うために
上司から似顔絵の描き直しを要求された瑞穂は、嫌々ながらも似顔絵の改ざんを行うことに。
激しい自己嫌悪とやりきれなさを抱えたまま、瑞穂は秘書課の広報公聴係へ配転されて――。




表題通り「顔」をテーマとしていて、ある似顔絵婦警の成長模様を描いた警察小説。
一話完結型の話として一事件ごとに区切られた連作短編集。

どこかで似た小説読んだ気がするなーと思ったら。
ああ、雫井脩介の『虚貌』だった。
頭は切れるが顔覚えの悪い老刑事が犯人を追う話で顔がテーマになってた。
同じテーマでも、見る角度、書いた作家によって伝わってくる印象は全然違うもんだねえ、としみじみ再確認する本の素敵さ。
顔を見る側、見られる側と書き分けたのが『虚貌』ならば、『顔―FACE―』はそこから一歩引いた小説に思える。
見たことない犯人の顔を描いて、見る。


目撃者の証言をもとに犯人の似顔絵を描く仕事。
数秒見ただけの他人の顔なんてどれほど覚えてるのだろうか。

「今日、コンビニのレジにいた店員の顔覚えてますか?」
「んー……、若い女だった、と思います。顔は……うーん……。あ、服装なら覚えてますよ。
セブンイレブンの制服でした。ですね、当たり前ですよね。」


と僕だったらこんな感じだろう。悲しいが自信がある。

凶悪事件の目撃者ならば、強烈なインパクトも手伝って犯人の顔を覚えてる場合もあるかもしれない。
しかし、無意識に見た犯人の顔を思い出せと言われて思い出せる人は少ないはず。
そこから犯人の似顔絵を作成するとなると、もうこれは大変な作業になる。
余計な先入観や憶測を与えないように目撃証言を対象から引き出し、似顔絵を作る。
完成してもその似顔絵が似ているかどうかなんて分からない、場合によっては証言者さえも。
本当に仕事が報われるのは犯人が捕まったときだけなのである。

「定型的な仕事」と考えてた僕の浅はかな理解はあっさり崩された。
いやー、いかに物事を表面だけで見てるかよく分かった。苦笑
ときには死体の顔を見て似顔絵を描くことだってある。
生半可な精神力で務まる仕事ではないなあ。
そんなわけで、瑞穂の仕事に懸ける情熱ぶりには「凄いなあ」と素直に尊敬し好感もった。
物語終盤、感じていたことがラストの一文にさらっと書かれていて思わずニヤけてしまったしね。

実社会における男女格差の実情や、新聞社と警察の関係といったものも巧みに取り入れられていた。
他著『動機』でも感じたが、筆者はこの二点に特に強い思いがあるのかな。


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え、昨日読んだ本の表紙?…それは覚ええますよ。笑
作家別・ヤ行(横山秀夫) | comments(0) | trackbacks(0)
『動機』横山秀夫
評価:
横山 秀夫
(2002-11)
Amazonおすすめ度:
四篇が収録された短篇集。
警察内部の不祥事舞台裏「動機」
殺人の前科がある男に入った殺人依頼の電話「逆転の夏」
男社会で働く女性記者の心のうち「ネタ元」
法廷で居眠りした裁判官「密室の人」
どれも楽しく読んだのですが、「動機」と「密室の人」のトボけたストーリーが特に良かったです。

「動機」

警察手帳一括保管制度。
手帳の紛失事故防止を目的として警視・貝瀬正幸が強行導入した新制度だった。
しかし、署内で保管していた警察手帳のうち30冊がまとめて盗難されるという前代未聞の不祥事が発生してしまう。



二世警察官として重圧を耐え抜き官僚となった貝瀬正幸が主人公。
警察手帳を失くさないためにまとめて保管したらまとめて盗難されました、というギャグみたいな不祥事の責任者として矢面に立たされた可哀想な男である。
内部犯か外部犯か!?というくだりが最初にあるのだが、
警察署内。鍵付きの保管庫。監視員まで付いてた。犯人は誰も見ていない。
……どうみても内部犯だろ。さっさと捕まえろよ。笑
とは思ったが、問題は動機なのだ。
考えるほど面白くなってくる。
警察官が警察手帳を30冊も盗む動機なんてあるのか。

短編ならではのスピード感あふれる展開。
浮いては沈む容疑者と動機、衝突する警察官たちの信念。
動機が鍵となるミステリでありながら、その真相のドラマにジ〜ンときた。
しかし貝瀬正幸。捜査経験ほとんどないわりに勘が良すぎるな。笑


「密室の人」

法廷で居眠りをしてしまい、挙句に妻の名前を寝言で連呼してしまった裁判官の話。
(トボけてる。笑)
父親の仕事から司法の世界を知り、その厳粛さ、形式の美に見せられ
真面目一筋で裁判官を目指した主人公だったが、法廷で居眠りしたことが問題になって――。



これは結末が秀逸だった。
法廷と家庭を同一線上に描いていき、形式美の中に秘められた部分を明らかにしていくのだが、
大胆に明かしておきながら余韻の残る結末。
破壊と再生と言ったら大げさなのかもしれないが、そんなことを考えた。

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読んでいただきありがとうございました
作家別・ヤ行(横山秀夫) | comments(0) | trackbacks(0)
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