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評価:
乾 くるみ
(2004-10-23)
Amazonおすすめ度:
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すべては一本の電話から始まった。
「現在の記憶はそのままに、過去の自分へ戻ることができる<リピート>。
そのゲストとしてあなたをお招きしたいのですが――」
こうして集まった男女十人がリピートに臨み、十ヶ月前へと旅立った。
しかしリピートの成功後、リピーター達が一人、また一人と、事件に巻き込まれ不可解な死を遂げていく。
リピート前の世界で起こらなかった事件が起きていることに困惑するリピーター達。
事件の真相を突き止めようと犯人探しを始めるが――。
なかなか悪趣味なタイムトラベルミステリだった。
主人公の毛利圭介は、スナックでアルバイトをしながら大学に通う四年生。
付き合っていた恋人との言い争いの末、思いっきり振られてしまい、それを根にもっている。
小心者なんだけど、自意識過剰で自己顕示欲の強い男である。
まあ、何というか、僕は全く好感の持てない主人公だった。苦笑
そんな毛利圭介を含めた十人が、十ヶ月前の自分へリピート(タイムトラベル)するわけである。
そこで何をやるかと思えば、
結果の分かっている競馬で大金を稼ごうとする者がいたり、
解答を知っている大学入試を受けて合格しようと企む者がいたり。
さすがに主人公はもっとマシなことするだろうと思っていたら、
恋人を振られる前に振ってやる、という何ともあほらしいことをやりだす始末。
お前らな、ネコ型ロボットが登場する某マンガを見習えよと。笑
便利グッズ使い放題のメガネ坊やでさえ、タイムトラベル中は慎重だったぞと。
実際にリピートするまでが長くて、何度か休憩しつつ読んだ。
リピートに対して半信半疑な毛利達が、時間遡行とは具体的にどういうものか、
またその際の注意点は〜という話が、ああでもないこうでもないと行ったり来たり繰り返される。
遊園地でジェットコースターに乗ろうとしたら係のお姉さんの説明が異様に長かった、みたいなあの感じ。
リピート後はジェットコースターよろしく、息つく暇も無い急展開、先が見えず高まる期待感。
一気に読みきってしまった。
乾くるみの想像力はとてつもないなあ。
いや、時間を遡るタイムトラベルものなんてのはよくある話なんだけど、
そこで起こる事件の真相がとてつもなかった。
あの長いリピート説明のくだりで飽きずに読み続けてよかった。
『イニシエーション・ラブ』同様、巧みなミスリードぶりに唸らされたよ。
今更ながらインターネットで筆者の紹介を見て気付いたけど、これってタロットカードをモチーフにしたシリーズ作品の一つらしい。
僕はハードカバー版の『リピート』読んだんだけど、装丁が裏表紙の裏まで続いていて、
それで裏表紙の裏の部分にタロットカードの絵があって、「あれ、この前読んだ『イニシエーション・ラブ』でも確か…」と思って確かめてみたら。
『イニシエーション・ラブ』が「The Lovers:恋人」
『リピート』が「THE WHEEL OF FORTUNE:運命の輪」
おお、それぞれの作品を象徴するかのようなカード。面白い……。
しかし毛利圭介を主人公に据えて、一人称語りにしたのは何故だろう。
どうにも好きになれなかった人物でもあるので、読後は複雑な気分。
ただ、タロットの示す意味に沿った物語であるならば、あの結末は不可欠なものになるので、
その結果、毛利圭介という主人公が出来たんだろうな。なんて半ば無理やりに自分を納得させてみたり。
他に『The Tower:塔』をモチーフにしたシリーズ作品があるみたいなので近々読んでみよう。
今リピートしたら、このブログ存在してないな。苦笑
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